武術家の高岡英夫氏が提唱する「ゆる体操」。その身体意識がスキーの動きに役立つものなのかどうか、検証してみます。
ゆる体操との出会い
10年以上前に、筆者が白馬にこもってスキー修行していた頃、宿泊先に置いてあった一冊の本を読む機会があったのですが、そのタイトルが
「高岡英夫は語る『すべてはゆるむこと』」
武術家の高岡英夫氏を紹介した本で、内容は相当インパクトのあるものでした。
合気で一度に何人もの大人をコロコロ転がしたり、剣術の師範クラスが動く間もなく立ち合いで斬られたり(もちろん真剣ではないですが)といった話から、果てはコップに注いだ瓶ビールの泡が生ビールのようにきめ細かくていつまでも消えないだの、若い頃はすれ違いに歩いてくる人の頭上を飛び越えただのと相当怪しいエピソードまで様々つづられていたのです。
氏に興味を持ち、あとでもっと調べてみようと思ったまま忘れ去って数年後、ラジオで古武術を現代スポーツに応用して云々と話しているのを聞き、ふと昔読んだ本の事を思い出したのです。
ゆる体操とは
宮本武蔵やイチローなど、身体運動において高いパフォーマンスを発揮する人(このような人を「達人」と呼んでいる)には共通点があります。
それは、「体が非常にゆるんでいる」ということで、このゆるみ具合が、一般人の考えているような肩の力を抜いてリラックスなどというレベルではなく、「骨や関節がとろけちゃってどこに行ったか分からない」ほどゆるむのだそうです。
他にも達人の共通点はいくつかあって、その動きに迫るためのメソッドが考案されているのですが、そのベースとなっているのが「ゆる」です。
体を「ゆする」と各パーツが「ゆれる」、そして「ゆるむ」というところから2字を取ってこの名がついています。
ゆるむことの効能は身体パフォーマンス向上のみならず、体を楽に健康にし、気持ちまで明るくなってしまうといいことづくめで、そのための体操が「ゆる体操」というわけです。
ゆる体操の実践
そして「クリームミルクのゆる体操」と「達人トレーニング入門」というビデオを入手したのですが、ピンクのロゴをふんだんに使ったデザインに男女が笑顔で写っているパッケージで怪しさ満点です。
まずはゆる体操。今まで本で見たような説明の後、実践者が紹介されているのですが、その中にSAJデモンストレーターの金子裕之氏まで入っています。これはスキーにもゆるが応用できるということなのか、期待が高まります。
ゆるの種類には骨のゆる「ほゆる」、筋肉のゆる「きゆる」、内臓のゆる「ぞゆる」があり、それぞれのゆるで体のパーツ一つ一つを意識して行うのですが、初心者はまず「ほゆる」から始めたほうがよいとの事です。
ビデオに出てくる講師と同じように実践してみますが、さすがに講師は動きが全然違います。本当にゆるーい動きをしています。
ゆらし方に決まりはなく、とにかく気持ちよくなるようにゆすれとのことで、意識としては骨がクリームかミルクのようにトロトロのバラバラになることをイメージします。
そうして頭から始まって足の先までゆるをかけていく訳ですが、気持ちの上からもゆるむためにすごいダジャレを連発します。
「次は、さぁこっつだ。鎖骨のゆるですね」
「上腕がジョワーンとするように」
「心臓のゆるはよーくやらないと、シンゾー」
極めつけは「Vゾーン体操」だ。これは股関節の意識を高めるために行いますが、仕事などで失敗したときや気持ちが落ち込んだときなどに使うと不思議と元気を取り戻すのだそうです。
やり方は、足の付け根のV字ラインをこすって刺激し、掛け声と共に大きくV字を描くというもので、これも一緒にやってみます。ビデオの中の3人と一緒に声を出してV字を描き、
「Vゾーン!」
「Vゾーン!!」
「Vゾーン!!!」
ビデオを見た人でないとこの雰囲気は伝わりませんが、なんだか元気が出たような気になりました。動作はどうみても「コ〇ネチ!」で、人に勧めるには勇気が必要そうです。
計30分ほどの内容なのですが、実践後は心なしか体が軽くなったような気がします。少なくとも気持ちは大分リラックスできました。
いつでもどこでも気軽に取り組めるゆる体操、スキーのみならず身体運動のパフォーマンスアップを図りたい方であれば、やってみるのも手ではないでしょうか。
まとめ
- 体をゆらすとゆるむことから「ゆる」の名がついており、身体パフォーマンス向上に役立つとされます
- とにかくリラックスして、体の各パーツごとにゆすってゆるみましょう
- Vゾーン体操は和みます(笑)
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