急斜面でスピードコントロールできずに転んだり、コブでコースアウトしたりしたとき、自分にイライラして「自分はダメだ」なんてぼやいてしまうことはありませんか?
こうしたセルフトークをやめて、自分との対話をする中に上達のヒントが隠されています。
ここでは、自分の中に眠っている能力を引き出す、インナースキーの手法についてご紹介します。
間違ったセルフトーク
たとえば急な斜面で滑るとき、自分でも分かっているのに後傾の体勢を立て直すことができずに転倒してしまい、自分に対して「何やってんだ」と腹を立てるようなことはありませんか?
こうしたものは、インナーゲームにおいては自分への誤った対応であり、うまくいくものをわざわざ失敗させてしまう要因とされます。
インナーゲームとは
インナーゲームとは、アメリカのテニスコーチであるティモシー・ガルウェイ氏が提唱する概念で、スポーツで勝敗がつく・タイムが出るなど現実の世界で行っているゲーム(アウターゲーム)に対し、自分の心の中だけで行われるゲームのことを指しています。
この概念の中で、自分の中には2人の存在がいて、それぞれセルフ1・セルフ2と呼ばれます。
セルフ1は、どういう動きをしようかなどと考えて、あれこれ自分に対して指示を出そうとする存在で、セルフ2は考えることなしに動く本来の自分であるとされます。
セルフ2に任せていれば素晴らしい能力が発揮できるのに、セルフ1が口を挟むことで迷い、失敗し、自信をなくしてしまうことになります。これが冒頭述べた、誤ったセルフトークということです。
要するにセルフ1を黙らせてセルフ2を自由にさせる、あるいはセルフ2を信じ切って全て任せることが重要というわけです。具体的にはセルフ1を、動いているときの体の状態を適切に感じ取らせる作業によって集中させ、セルフ2の仕事を邪魔させないようにするというのがインナーゲームの手法です。
インナースキー
このインナーゲームをスキーに応用したものがインナースキーというわけです。
「ここはこうするんだ」あるいは「こうしてはいけない」といったセルフ1による心の声をおとなしくさせるのです。
例として、目をつぶって滑る、ブーツのバックルを全て外して滑るなどして、感覚を研ぎ澄ます必要がある状況を作り出し、意識を集中させるのです。
体がどうあるべきかではなく、実際にどうなっているか、体の内部に何が起こっているかを感じることに重点を置いて滑るのです。
ちなみに、「インナースキー的に滑ろう」とか「セルフ1の意識を排除しよう」などといった意識もセルフ1として仕事していることになるので、意識を無にする=身体意識に集中することに力を注ぎましょう。
インナーゲームの真の目的
しかし、インナーゲームの目的は競技で結果を出すことではなく、自分の力を極限まで引き出すこととしています。
最高の集中をしているそのときにだけ体験できる、すべてが調和した世界があるということですが、これはすなわちゾーン体験やフロー体験と呼ばれるものと同一です。
勝利や好成績といったものは、あくまで集中してベストパフォーマンスを発揮した結果「勝手に」ついてくるもので、本当の目的は自分の世界をより深めることにこそあるとされています。
そして、自分の力を出し切ることができた者をインナーゲームの勝者であると言っているのです。
現実世界のメダルやトロフィーの先にある、自分の中にだけ存在するご褒美を求める姿勢というのは、日本の武道に代表されるような求道の精神に通じるものがあるのではないでしょうか。
まとめ
- 心の声に惑わされず、ありのままの自分を信じることがインナーゲームの本質
- インナーゲームを応用したのがインナースキーで、意識を身体の感覚に集中させます
- インナーゲームが目指すものは現実世界の勝敗結果ではなく、自分の中に眠っている能力を極限まで引き出すこと
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